舞台「解体OK」

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2012.4.29 両国・Air studioにて
劇団空感エンジンプロデュース「解体OK」

 舞台の記事が続きます。
 今回は以前知り合った俳優さんがお二人出演されているので観に行きました。

~あらすじ~
 二年後に解体される築四十年のボロアパート若竹荘。そこに住んでいるのは売れない芸人:田中と受験を控える学生:佐藤。ある日、田中の隣に新婚夫婦が越してきて…。

 この舞台はA班とB班の二班あり僕のお目当ての俳優さんがそれぞれ別の班に入っていたため、両公演とも観ることにしました。同じ舞台を二パターン続けて観たのは初めてです。こういった形での公演はよく見かけますがなかなか行けずにいました。今回はその点でいいきっかけができたので思い切って行ってきました。

 それはさておいて舞台の感想ですが、まずセットが凄かったです。6畳のアパートが壁を挟み二部屋分まるまる作り込まれていました。台所やコンロ、冷蔵庫も実物で組まれていて驚きました。しかも水道からは水が出て、コンロには火が付き、冷蔵庫の電源も入っています。さらに感動したのはこの冷蔵庫。新婚夫婦が引っ越してきたときには電源が入っていない状態になっていて、その後生活を始めた頃にはちゃんと電源が入っているのです。この辺を忠実に再現していることに妙に感動していました。

 また舞台の装飾もなかなか充実していて面白かったです。その中で一つ気になっているのは冷蔵庫に貼ってあった「田中のものは村上のもの」という張り紙です。それ自体はいいのですが実際の芝居を見ている限り、田中と村上は立場が逆なのではないかと思いました。そもそもこの二人はジャイアンとのび太のような関係ではなく、お互いに対等かもしくは田中の方が少し優位なぐらいの関係に見えました。飾り物一つで考えすぎかもしれませんがその辺りはどうなのかと少し気になりました。

 僕はまずB班の公演を観ました。座席は下手側最前列です。冒頭から終わりまで素直に楽しむことができ、初めて観たお目当ての俳優さんの演技もじっくり堪能することができました。舞台を観た後は劇中の世界観がしばらく頭に残ります。僕はいつものようにその世界観に浸りながら、次回A班公演の開演を待っていました。

 そしてA班の公演が始まりました。先程と同じ舞台を観る覚悟でいた僕は物語が始まって数分後、何か不思議な違和感を覚えました。話の筋は変わっていないのに全く別の作品を観ているような感じがするのです。俳優が変わったところはその役の色もガラリと変わっています。これは当然と言えば当然なのでまだ分かります。流石に性別が女から男になった役には驚きましたが(笑)

 しかし、観た感じ作品の色までガラリと(ちょっと言い過ぎかもしれませんが)変わっているのです。これは新しい発見でした。性別が入れ替わったことで多少言い回しが変わった部分はありましたが、それ以外にも台詞のニュアンス自体が変わっている部分もありB班の内容と比較しながら観ているととても楽しめました。佐藤はもちろん、先輩芸人もコンビを組んでいる女芸人も新婚夫婦の奥さんも雰囲気から声から全く異なり、完全にB班とは色が違いました。同じ舞台だからといってそれに囚われる必要はないということを思い知らされました。こういうやり方もアリなのかと勉強になりました。

 その中でも新婚夫婦はそれぞれ全く印象が違いました。色に例えるならB班の夫婦はオレンジ、A班の夫婦は薄ピンクといった感じでしょうか。そのこともあってか、奥さんが亡くなる場面で受ける感情がA班とB班で何となく違うのです。言葉では説明しにくいですが、明らかに違いがありました。何とも不思議な感覚です。

 最後に一つ言わせていただくと物語の終盤のところで、亡くなった奥さんの旦那が突然脳死問題に触れるシーン。あそこは要らないのではないかと思いました。全体から少し浮いていました。あの場面は脳死問題を扱うにしては短いものでしたが、本作で掘り下げるところでもないと思いますので全く入れないというのも一つの手だったと思います。そこが中途半端なことになっていて少し残念でした。(お気を悪くされたらすみません)

 今回、同じ舞台を二パターン観てとても興味深い体験ができました。これを機に今後A班・B班構成の舞台を観る際にはなるべく両方チェックしてみたいと思います。皆さんにもおすすめします。きっと新しい発見がありますよ。

P.S.
 かなりの長文になってしまいました。読んでいただいた皆様ありがとうございます。

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山下 大裕映画監督・DYCエンターテインメント代表

投稿者プロフィール

1992年6月9日生まれ、27歳。福井県敦賀市出身。敦賀高校普通科→日本映画大学映画学部映画学科脚本演出コース1期卒業生。20歳の冬を迎えた2013年、地元敦賀を舞台にした自主製作映画『SNOWGIRL』(62分)を初監督し、2015年には敦賀映画第2弾と銘打ちオール敦賀ロケで『弥生の虹』(74分)を監督。2017年には敦賀市からの依頼を受け観光ショートムービー『いつか、きらめきたくて。』(全四話)の監督や敦賀市市制80周年記念映像『敦賀市 80年のあゆみ』の構成・撮影・編集を務める。18歳の頃から“2020年までに全国公開作を撮る”と公言し日々奮闘中。2017年7月~2018年12月まで本土最南端の鹿児島県南大隅町地域おこし協力隊として映像での地域活性化に力を注ぐ。2019年より再びフリーランスに戻り鹿児島を拠点に10年来の夢を果たすべく奔走中!

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本土最南端の映画監督
DYCエンターテインメント 代表:山下大裕


1992年6月9日生まれ、27歳。福井県敦賀市出身。
敦賀高校普通科→日本映画大学映画学部1期卒業生。

20歳の冬を迎えた2013年、地元敦賀を舞台にした自主製作映画『SNOWGIRL』(62分)を初監督し、2015年には敦賀映画第2弾と銘打ちオール敦賀ロケで『弥生の虹』(74分)を監督。2017年には敦賀市からの依頼を受け観光ショートムービー『いつか、きらめきたくて。』(全四話)の監督や敦賀市市制80周年記念映像『敦賀市 80年のあゆみ』の構成・撮影・編集を務める。18歳の頃から“2020年までに全国公開作を撮る”と公言し日々奮闘中。2017年7月~2018年12月まで本土最南端の鹿児島県南大隅町地域おこし協力隊として映像での地域活性化に力を注ぐ。2019年より再びフリーランスに戻り鹿児島を拠点に10年来の夢を果たすべく奔走中!

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