舞台「Kiss Me You ~がんばったシンプー達へ~」(※若干ネタバレあり)
- 2012/5/26
- 舞台の話
2012.5.25 新国立劇場/小劇場
エアースタジオ企画「Kiss Me You ~がんばったシンプー達へ~」
友人から薦められ急遽観に行くことに。舞台を観て感動することはありますが、その中で涙が出る作品というのは実は稀です。僕にとっては本作が2本目となりました。(1本目は劇団昴の「暗いところで待ち合わせ」)
物語は大東亜戦争末期の日本を舞台に、特攻隊員の男たちとその家族や恋人によって繰り広げられます。
特攻隊で思い出すのは昔一度行った知覧特攻平和会館。幼いながら恐怖と強い悲しみを覚えたことを記憶しています。
開演前に配布されたパンフレットの「コメディータッチで作った」という言葉を見て少し不安になりましたが、実際に観ると予想以上に素晴らしい出来でやられました。
特攻隊の資料映像は見たことがありますが、今生きている世界とはあまりに状況が違い過ぎて、自分と同じ人間に起きた出来事とはとても考えられず、これまでは悲しい歴史として捉えることしかできませんでした。
しかし、今回のように当時の様子を生身の人間が演じた後に続けてその映像を見ることで、歴史の授業で聞くよりはその頃の感覚に近いものが得られたような気がします。
貰った花束を抱え一人特攻機に乗り込んでいく姿はとても見られたものではありません。でも実際はもっともっと深刻だったはずです。僕たちは会ったこともなく名前も知らない彼らを見て泣いていましたが、当時の人にとってはその特攻機に乗っていく隊員が家族や恋人なのです。それがどんなに悲しい出来事だったのか想像ができません。
所々で笑いが起きていた前半とは打って変わり、後半に入ると今度は所々で泣いている人が目立ちました。しばらく堪えていた人たちも当時の実写映像が流れたところでその多くが崩れていきました。これは本当にあった出来事なのだということを最後に観客の胸に突きつけて舞台は終演となりました。
その場で余韻に浸っているとどうかしてしまいそうだったので、今回ばかりはすぐに会場を後にし駅へ向かいました。帰り道、満員電車で暗い顔をした人を見ているときでさえも「生きている幸せ」を感じました。
作品について気になるところを言うならばタイトルがちょっと安っぽいということ。作品を観る限りKiss Me Youというワードがそれほど重要なわけでもないのでなぜこのようなタイトルにしたのか疑問に感じました。雰囲気的には日本語が良い気がします。とは言っても代替案が浮かばないのが悔しいですが、作品自体はもの凄く素晴らしいので少々勿体ないような気がしました。
それともう一つ。サザンの曲を使っていること。確かに作品にはマッチしていましたが、やはり既成曲はその曲自体のイメージが拭えませんね。名曲であるほどそうです。舞台にせよ映画にせよオリジナルの音楽の方が作品には溶け込みやすいと思います。あくまで一観客としての意見ですが。
本作の公演は残り4回で明日26日の14時と18時半、明後日27日の12時と16時に上演されます。当日券も若干出ているようなので作品が気になる方には是非おすすめします。本当におすすめします。
「Kiss Me You ~がんばったシンプー達へ~」詳細情報は以下から
http://www.airstudio.jp/index_120523kissme.html
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