第2回日本映画大学卒業制作上映会

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昨日今日と日本映画大学2期生の卒業制作上映会に行って来ました。
昨日はA,Bブロック、今日はCブロックを観ましたがいずれの回も盛況なようでした。

映画評論という程のものは書けませんが、せっかく観に行ったので気楽に感想を書いてみたいと思います。

Aブロック・ドラマ 『深爪』
ドラマ3本の中で最も30分に上手くまとまっていた作品だと思いました。ただ本屋の男に関してはややミスキャスティング(あるいは芝居が違う)な気がします。彼が主人公の女性が好きになりそうな男に見えなかったので観ていて少し苦しかったです。単にイケメンであれということではないのですが、彼の芝居・役柄が優しさよりも気持ち悪さで勝っていたのでそう思ってしまいました。
また母親が懇意にしている男もネイルサロンを畳んでまで着いて行くほど好きな男には見えませんでした。そのためネイルサロンの閉店が苦渋の決断という風には見えずただ簡単に店を畳んでいるように映ってしまい、母親のネイリストという仕事に対する思い入れが見えませんでした。この母親は結果的に今ネイリストをしているだけで、仮にネイリストとしてやっていけなかったとしても後悔することはなかったんだろうなと読んでしまいました。製作者の意図がどうだったのか気になります。
終盤で母親が施してくれたオレンジネイルに関しては“母はやはり母である”というメッセージが気の利いた形で伝わってくる演出で非常に良かったです。いろいろと書きましたが上映会の1本目でこの作品を観たとき、去年の我々の卒業制作よりも一歩先を行かれたなと思ったのが正直なところです。

Aブロック・ドキュメンタリー 『潮風』
先ほどのドラマに対して、こちらのドキュメンタリーでは“父はいつまで経っても父”であるということが描かれていました。題材に対する監督の思いの強さはとても良く伝わってきましたが、それ故に自己満足色が強い作品になっていると思いました。監督の熱量に観る側が圧倒されてしまい少し引いてしまったところがあります。製作者がもう一歩引いた位置に立ってくれると観客も中立の立場で観ることができ、捉え方の幅をきかせられたのではないかと思います。若干押しつけがましさを感じました。そして57分の尺はもう少し削られたと思います。少し長かったです。

Bブロック・ドラマ 『日々こもごも』
主役を始めキャスティングは非常に良かったのですが、結局のところ何が伝えたいのか正直よく分かりませんでした。終わり方もなんとも言えない締まりの悪さを感じました。鍵盤ハーモニカで演奏する『猫踏んじゃった』が度々出てきましたがあまり効果的とは言えずただ雰囲気だけの作品になってしまっていたように思います。
またおばあちゃんがゴミを集める理由もいまいち掴めず共感できませんでした。一見普通のゴミに見えるものがおばあちゃんにとっては大事な思い出であるというのであればまだ納得できるのですが、おばあちゃんがゴミステーションから持って帰ってきたのはタダの発泡トレイでした。つまり思い出だからゴミを取っておきたいということではないのだろうと思いますが、そうなるとちょっと何がしたいのか分かりません。これも製作者のコメントを聞いてみたいです。ゴミ屋敷のゴミはよく集めて作り込んだと思います。本当にゴミ屋敷になっていてその辺は自然と入っていけました。

Bブロック・ドキュメンタリー 『愛しきトラヂ』
こちらはいつかどこかで観たことのあるような作品でした。随分前に観た日本映画学校の頃の卒業制作でしょうか、こんな作品に出会った気がします。雰囲気が近いというだけで決して模倣だと言っている訳ではありませんのであしからず。ただこの作品独自の突飛な魅力というのが見出せず、他に埋もれてしまいそうな印象を受けました。またナレーションの語り口が特徴的でそこに気をとられる部分もありました。
今年のドキュメンタリーは3本ともセルフドキュメンタリーという形で自分や自分周辺の人に焦点を置いた作品でしたが、これらの監督が次に何を撮るのか非常に気になります。そこで初めて監督の本当の個性が見えてくることだと思います。

Cブロック・ドラマ 『水際の魚』
聞くところによるとこの作品が今年の卒業制作で最も評価が高いようですが、実際に観てみるとそれもまあ納得と言えば納得でした。私の好みではありませんがそれは置いておいて、映画学校の匂いがプンプンする作品に仕上がっています。観た人は分かると思いますが、あ、こういう話映画学校の人好きだよなという感じの物語でした。(去年の卒業制作で言うところの『さよならあたしの夜』) 監督やプロデューサーが冒頭の挨拶でも語っていましたが、自分より年上(本作では30代の女性)を描くのはなかなか難しいようで、彼らの苦労の跡が滲み出ている作品でした。本作は脚本と監督が別になっているので高巣監督が書いた脚本ではありません。個人的に彼を知っていることもあり、彼がこの作品で本当に自分色を出せたのか正直疑問に思ってしまうところもありましたが、この難題に取り組もうとする彼自身の覚悟も同時に見える作品でした。

Cブロック・ドキュメンタリー 『EXPAT』
『水際の魚』とは一変し、こちらは今までの映画学校にない作品でした。監督のアリーナさんはベラルーシの出身です。作品を観て、彼女や彼女の友人たち(それぞれ異国からの留学生)は自分自身のことについてよく考えているのだなと感心されられました。母国から遠く離れた国へ留学している人故の自分との向き合い方なんだろうなと思いました。日本に生まれ日本に育つ私はそこまで自分のルーツや自国の歴史について深く考えることはないのでその差を強く感じました。作品の尺(45分)は若干長く感じましたが、復活祭の様子や地元の食べ物、変わったゲームなど普段目にすることのないものがたくさん出てきたのでその物珍しさから何とか飽きずに見終えることができました。

こんな感じで6本観てきたのですが、私の記憶ではどの作品もタイトルが黒バックに白字(あるいは風景バックに黒字)でした。これはもうひとひねりあっても良かったんじゃないかと思いました。また多くの作品で美味しそうな食べ物が登場しお腹がすきました。ということで感想は以上です。偉そうに好き勝手書きましたがあくまで私個人の意見なのでどうかお気になさらず。時間がなくアンケートを書けなかったのでこちらにまとめてみました。

何はともあれ、2期生の皆さんお疲れ様でした。
そして良いものを見せて頂きありがとうございました。

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山下 大裕映画監督・DYCエンターテインメント代表

投稿者プロフィール

1992年6月9日生まれ、27歳。福井県敦賀市出身。敦賀高校普通科→日本映画大学映画学部映画学科脚本演出コース1期卒業生。20歳の冬を迎えた2013年、地元敦賀を舞台にした自主製作映画『SNOWGIRL』(62分)を初監督し、2015年には敦賀映画第2弾と銘打ちオール敦賀ロケで『弥生の虹』(74分)を監督。2017年には敦賀市からの依頼を受け観光ショートムービー『いつか、きらめきたくて。』(全四話)の監督や敦賀市市制80周年記念映像『敦賀市 80年のあゆみ』の構成・撮影・編集を務める。18歳の頃から“2020年までに全国公開作を撮る”と公言し日々奮闘中。2017年7月~2018年12月まで本土最南端の鹿児島県南大隅町地域おこし協力隊として映像での地域活性化に力を注ぐ。2019年より再びフリーランスに戻り鹿児島を拠点に10年来の夢を果たすべく奔走中!

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本土最南端の映画監督
DYCエンターテインメント 代表:山下大裕


1992年6月9日生まれ、27歳。福井県敦賀市出身。
敦賀高校普通科→日本映画大学映画学部1期卒業生。

20歳の冬を迎えた2013年、地元敦賀を舞台にした自主製作映画『SNOWGIRL』(62分)を初監督し、2015年には敦賀映画第2弾と銘打ちオール敦賀ロケで『弥生の虹』(74分)を監督。2017年には敦賀市からの依頼を受け観光ショートムービー『いつか、きらめきたくて。』(全四話)の監督や敦賀市市制80周年記念映像『敦賀市 80年のあゆみ』の構成・撮影・編集を務める。18歳の頃から“2020年までに全国公開作を撮る”と公言し日々奮闘中。2017年7月~2018年12月まで本土最南端の鹿児島県南大隅町地域おこし協力隊として映像での地域活性化に力を注ぐ。2019年より再びフリーランスに戻り鹿児島を拠点に10年来の夢を果たすべく奔走中!

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