映画馬鹿のススメ 80s→90s PFFリバイバル上映
- 2012/1/29
- 映画イベント
2012.1.28 オーディトリウム渋谷にて
バンタンデザイン研究所の学生有志による上映イベント「映画馬鹿のススメ」に行ってきました。この企画は自主映画の登竜門と言われ現在も続いているPFF(ぴあフィルムフェスティバル)で80年代90年代にグランプリを受賞したうちの三作品を上映するというもの。Facebookで偶然見つけタイトルと内容に惹かれ行くことを決めました。
僕自身PFFにはものすごく興味があり来年は作品を出品しようとも考えているのですが、実際に出品作を観たのは今回が初めてです(昨年は都合が合わず行けませんでした)。
上映作品は以下の三本
『雨女』
(1990年PFFアワードグランプリ)監督:矢口史靖
『夕辺の秘密』
(1989年PFFアワードグランプリ&最優秀女優賞)監督:橋口亮輔
『電柱小僧の冒険』
(1988年PFFアワードグランプリ)監督:塚本晋也
僕は正直なところ、これら三作品がグランプリを受賞した理由が現段階で理解できていません。決して作品が悪かったと言っているのではありませんが、審査員の心にどう響いたのかが気になりました。これからじっくり考える必要があるようです。
意外だったのが三作品の中で一番分かりやすかった作品が塚本晋也監督の『電柱小僧の冒険』であるということです。塚本監督の作品で有名な鉄男シリーズ三部作を以前観たのですが、僕にはほとんど理解できない世界が繰り広げられていたのを記憶しています。それが今回は他の二作と比べると割と理解しやすい内容だったのが驚きです。塚本監督の作風は僕の好みとは全くかけ離れているのですが、彼は自分のしたいことを自由に表現しているという点で尊敬できます。自身のブランドとして確立された個性を持っているということは注目すべき点だと思います。
『夕辺の秘密』は橋口監督の所有するフィルムで上映されました。8㎜フィルムの作品をスクリーンで観たのは初めてでしたが、思った以上に綺麗に映っており驚きました。
途中に行われた橋口監督と北川仁監督(2011PFFグランプリ受賞監督)によるトークイベントでもなかなか興味深い話が聞けました。橋口監督は、最も重要なのはフィルムであるかデジタルであるか、撮影技術が上手いか下手かということよりも、作り手の思いがどうであるかということだとおっしゃっていました。これは僕にとって非常に励みになる言葉でした。
フィルムでの撮影はデジタルでの撮影に比べると緊張の度合いが違うとよく言われます。これは僕も昨年行われたフィルム実習の経験から納得できます。しかしだからと言ってフィルムでなければダメかというと僕はそうではないと思います。フィルムの緊張感に近いものをデジタルの撮影に引き継ぐことは制作者の意識一つで可能になると思います。ハードの問題はそこまで大きなものではないような気がします。
少なくとも自主制作期間に関しては緊張感を求めるためにフィルムを選ぶよりも、むしろコストのかからないデジタル撮影を多用すべきだと思います。フィルムを否定するわけではありません。ただお金のない現時点ではそこに予算を使うより作品に使いたいということです。緊張感は自分たちである程度作れるはずです。映像の質感云々となると確かに差はあるかもしれませんが、それは今気にすることではないと思います。今は作品に力を入れるべきです。
Facebookページに書かれていたテーマ「デジタル撮影における自主制作の可能性」に関しては、思った程触れられていなかったような気もしますが、いろいろな話をお聞きすることができたので良かったかなと思います。普段過去のPFF作品を観る機会はほとんどないので今回の上映企画はとても素晴らしいものでした。
関係者の皆様ありがとうございました。
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