2016年の圧倒的傑作映画
皆さん、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』はご存じですか?
作品を観ていない方も一風変わったタイトルが目に留まったのではないでしょうか。
本作は日本映画学校卒業生の中野量太監督による商業映画デビュー作品です。
キャストは主演の宮沢りえさんをはじめ、杉咲花さん、オダギリジョーさん、
松坂桃李さんなどと華やかです。
私は10月29日の公開に先立ち東京国際映画祭の会場で拝見したのですが、
ぶっちぎりで2016年ベストワンを飾る作品になりました。
劇場へ足を運んだ方だけが得られる満足感を残した予告編
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』予告編
予告編を観ると真っ赤な背景にいきなり「余命2ヶ月」と出てくるので、
「あ、また病気で死んでしまう系の映画なのね」とジャンル分けされる方がいるかもしれません。
しかしこの作品はそこで片付けてしまっては非常にもったいない作品です。
映画予告編には見せ場を予告編でほぼ全部出ししてしまうものと、
劇場での見せ場をちゃんと取っておいてくれるものとの2種類あります。
その中で本作は後者であるということを言わせてください。
映画は作品ですが当然ビジネスでもあります。
これは極論ですがお客様に劇場へ足を運んで頂ければ興行収入として記録されます。
予告編で見せ場をほぼ全部出しして期待度を極限まで上げれば動員に多少は影響します。
その上で作品自体の中身がスカスカであったり予告編のロングVer.のようなものであったとしても、
(Twitterやレビューサイトにいろいろと書かれるかもしれませんが)数字にはなります。
こうしたその場しのぎ的な数字稼ぎに走り観客の期待を裏切り続けていくことが
映画鑑賞人口が増えないどころか減っていく理由の一つなのではないかとも思います。
(もちろん理由はそれだけではありません)
そんな中で商業的リスクを抱えながらも劇場に足を運ぶ観客のことを考慮し、
あえて見せ場を抑えた予告編に仕上げられている本作に映画への熱い愛を感じました。
この映画、何が良いの?
「良い、良いと言うのは分かったけど実際何が良いの?」と言われそうなので、
私が思う本作の魅力を簡潔にお伝えします。
昨今、病気による死を安易に扱った(つもりはないにしてもそう見える)作品が多い中で、
本作はいわゆる”余命もの”への挑戦とも言えるような作品に仕上がっています。
単に死が哀しいということだけでなく登場人物全員の人間味が広く描かれ共感を呼び、
喜怒哀楽が全て詰まった温かい作品です。また”余命もの”にありがちなシーンや展開をカット、
あるいは想像を超える形で膨らませ、且つ突飛なことをやればいいという方向だけに走らず、
心地よいところや意外なところに落とし込んでくれる点などが本作の魅力です。
余談ですが私は「ニュー・シネマ・パラダイス」ぐらいでしか泣いたことはありませんが、
本作にはやられました。泣きを売りにする訳ではありませんが参考までに。
この傑作が47都道府県のうち福井と鳥取でだけ上映されていません→その後福井追加決定!
なんということでしょう。全国公開といってもいろいろなくくり方があるので仕方ないですが、
47都道府県のうちこの2県だけ上映がなく、しかもうち1県が我が故郷福井であるとは残念です。
この投稿が効いたのか当初の予定通りだったのかどうかは分かりませんが、
12月8日の時点で本作公式HPの劇場情報を見たところ福井のテアトルサンクが追加されていました。
公開は2017/2/11(土)~ということで一番最後ですが、無事福井上映が決まったようで何よりです。
都市部が10月29日公開、その他地域(福井・鳥取を除く全国)が1月7日公開で、
福井と鳥取だけがこの枠に外れていたので上映されないのではないかと心配していました。
(ちなみに現時点でも鳥取での公開予定は確認できておりません)
福井の皆さん、是非この機会に本作をご覧ください。
私も高校卒業までの18年間福井県敦賀市に住んでいましたが、
地元の劇場で上映されているのは超メジャー級の大作だけでした。
そのため上京してから「~年の『~~~』っていう作品が良かったよね」などと
割と最近の映画の話を振られてもその作品の存在すら知らないということが多々ありました。
地元にいた頃は気付きもしませんでしたがこれは映画における地方格差だと思います。
とはいえ都内で観られる映画を全部地方で上映して欲しいと言うのは商業的にも厳しいと思います。
ただ本作のような素晴らしい映画に対し観るという選択肢がない場所が県レベルであるというのは、
非常にもったいないので超メジャー級の大作の上映回を1回削ってでも選りすぐりの作品を上映する
機会を確保して頂けるとありがたいと思います。
…と一観客目線で言っているだけではそう簡単に状況は変わらないので、
今後私なりにできることをしていきたいと思います。
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