4年前に書いた短編脚本(非映像化)を読み返してみた ※全文掲載
- 2016/11/15
- 考え事
脚本を書いたことのある人なら分かるかもしれませんが、
書き始めの頃の脚本ってとても人に見せられないような出来で
いわば黒歴史みたいなところってありますよね。
私にもそういう本はたくさんあるのですが、
今日久々に読み返してみたところなかなかシュールな作品が1本ありました。
4年も前ということで(当時20歳)今となっては恥ずかしがる必要もないので、
初心にかえるためにも一旦ここで吐き出してみることにします。
この作品は2012年10月に日本映画大学映画学部2年脚本演出コースの
1シーン実習という授業の中で学生一人ひとりが1本ずつ提出した作品です。
私の作品はゼミ内のコンペに落ち映像化できなかったので、
その悔しさもあり翌年2月に『SNOWGIRL』という自主映画を撮りました。
つまりこの本は『SNOWGIRL』以前に書いた本ということです。
公にするつもりもなく書いた本なので普通は人前で見せません。
しかし私は常識にとらわれ周りと同じように生きるのが嫌なので、
あえてその逆を行くという意思表示の意味も込めてオープンにしたいと思います。
そんなわけで非常に恥知らずな記事ではありますがどうかお許しください。
(掲載にあたっての再編集は一切していません)
『仲直りの時間』
脚本 山下大裕◎登場人物表
鈴木健(18)… 高校三年生。昨日の交通事故で足を骨折。
小澤義郎(62)… 健との交通事故で亡くなる。幽霊。
優子(27)… 看護師。1 病院の個室
暗闇の中で鳴っている救急車のサイレン音が遠ざかる。
足を包帯でぐるぐる巻きにされた鈴木健、ベッドに寝ている。
部屋に看護師の優子が入ってきてカーテンを開ける。
優子「ほーら、起きて!朝だよ」
健、強い日差しに当たり目を覚ます。
健「うー…」
優子、軽く健の頬を二度叩く。
優子「ほら、おはよ!」
優子、健の額に手を当て、持っている帳面に36度4分と書き、部屋から出ていく。
健、目を開け、天井をじっと見つめている。
すると突然、ボロボロに破れ血の滲んだ服を着た小澤義郎が視界の左側から現れる。
健「うわっ!」
健、驚き、掛け布団を抱えたまま体ごと右に向く。
ベッドの柵に足をぶつけ声を上げる。
健「痛ってえー!」
その後、何も起きず元の体勢に戻ろうとした途端、義郎が今度はベッドの右横から顔を出す。
健「うわっ!」
健、再び足をベッドの柵にぶつけ、唸り声を上げる。
健「痛っっってえーーー!」
義郎「やかましいわ!お前、病院なんだから静かにしろっ!」
健「うるせえ、この化けもん、出てけ!」
義郎「化けもんだと?この野郎…」
義郎、指を鳴らす。
すると一瞬で健の口にガムテープが貼られる。
健「ん!?」
戸惑う健、ガムテープを剥がそうと布団から手を出す。
しかし、両手もガムテープでぐるぐる巻きにされている。
健「んーーー!」
義郎、冷蔵庫の中から未開栓のスポーツドリンクを手に取り椅子に腰かける。
健、首を左右に振りながら唸っている。
義郎、無視して蓋を開け一気飲みする。
義郎「はぁー」
義郎を睨む健。
義郎「何睨んでんだよ。お前なあ昨日のこと覚えてっか?」
健、義郎を睨み続ける。
義郎、立ち上がり冷蔵庫からスポーツドリンクをもう一本手に取る。
義郎「(笑いながら)おい、冗談じゃねえぞ。お前は、昨日、俺の車の前に急に飛び出してきて、事故った。で、俺は死んだ。お前は骨折だけで済んだ。つまり俺は幽霊。幽霊の鈴木義郎ってんだ。分かったか?」
健、ハッとする。
義郎、指を鳴らす。
健のガムテープがなくなる。
健「あっ、あのときの…」
義郎「そうだ。だから飲み物ぐらいよこせよ」
義郎、スポーツドリンクの蓋を開け一気飲みする。
健「…ごめんなさい、亡くなったなんて聞いてなくて…」
義郎「いいんだよ別に、死んだのは仕方ねえし、今何言ったってしょうがねえよ。それに俺だってもう年だから、十分満足してる」
健「えっ…」
義郎「こう見えて俺もなかなかいい人生送ってきてんだよ」
健「はあ」
義郎「お前も人生楽しめよ。じゃあな!」
義郎、ナースコールのボタンを押し、指を鳴らして去る。
健「あっ!」
部屋に優子が駆けつける。
健、両手と口にガムテープが貼られている。
口に貼られたガムテープには少し血痕があり黒マジックで『剥がしてください』と書かれている。
優子「ちょっとこれ、どういうこと?」
優子、健の口に貼られたガムテープを思いっきり剥がす。
健「痛ってえ!」
優子「あはは!ごめんね」
健「…」
健、口元をさすっている。
優子「じゃ、朝ご飯持ってくるね」
立ち去る優子。
両手に巻きつけられたガムテープを剥がそうとする健。《終》
※無断引用・転載を禁じます。
いかがでしたでしょうか。
ちなみにその後初監督した『SNOWGIRL』で実際に指を鳴らすシーンを入れているので、
当時の私は指を鳴らして何かことを起こすという場面がやりたかったのだと思います。
この本はゼミ内のコンペに落ちたと書きましたが、
私は日本映画大学の在学中結局1度もコンペに勝ち残ることができず、
脚本演出コースに進みながらも一度も監督権をGETする機会には恵まれませんでした。
しかしそれでも映画を撮って上映することはできるのです。
ゼミの実習で選ばれず、悔しさで『SNOWGIRL』を撮り、
卒業制作で選ばれず、悔しさで『弥生の虹』を撮りました。
どちらの作品も東京・敦賀で自主上映会の開催までこぎつけ、
『SNOWGIRL』は616名、『弥生の虹』は725名のお客様にご鑑賞頂きました。
『SNOWGIRL』については今年大阪でも初上映することができました。
学校で評価されなくても映画祭で評価されなくても、
自分自身さえ腐らなければ映画を続けていくことはできます。
その確信を持ち私は日々を過ごしています。
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